先日、杭名小学校で防災キャンプを行いました。
テーマは「地震」です。
はじめに
防災キャンプ数日前の8月8日16時43分頃、日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生しました。宮崎県では震度6弱を記録し、岩国市でも緊急地震速報が流れ、震度2を記録しました。
この地震の発生に伴い、南海トラフ地震の想定震源域では、大規模地震の発生危険が高まっているとして、8月8日19時15分に南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表されました。
今年元旦を襲った能登半島地震、そして、南海トラフ巨大地震がいつ起きてもおかしくない今の状況、国民の地震に対する意識は確実に高まっています。
今回の防災キャンプでは、これから起こるであろう巨大地震に、危機感を持って備えてほしいという思いから、「防災対策」「避難対応」「避難生活」の3つに焦点を当て、訓練を企画しました。
以下、内容を紹介します。
防災対策
まずは地震における基本的な知識についての学習を行いました。
具体的には、地震の種類や発生メカニズム(活断層型と海溝型)、震度とマグニチュードの関係、地震後の津波や土砂災害についてなどです。
その後は、地震が起きる前の防災対策として、耐震化や家具固定の必要性、非常持出品や備蓄について学んだ後、今回初めて発令された、南海トラフ地震臨時情報について、重要な部分をお話ししました。
避難対応
地震が起きてからの避難対応として、緊急地震速報と3つの安全行動(①姿勢を低く②頭を守って③動かない)についてを中心にお話しした後、実践を想定したシェイクアウト訓練を行いました。
訓練では、参加者全員が、緊急地震速報が鳴ってからすぐに安全行動をとることができました。
訓練後の振り返りでは、「その場の状況に応じた安全行動をとるためには、危険をイメージすることが大切だということに気づけた。」と、多くの方が言っており、とても効果的な訓練を行うことができました。
避難生活
みなさんは「災害関連死」というワードを聞いたことがありますか?
災害関連死とは、災害による直接的な死ではなく、間接的な要因による死を指します。
災害関連死は、過去の災害でも繰り返されており、300人以上の方が亡くなった能登半島地震では、災害関連死は100人以上と言われています。
この災害関連死の原因のほとんどが、避難生活を行ううえでの身体的・精神的なストレスです。
避難生活は水・電気・ガスが止まった中で多くの人が一緒になって生活します。
そのストレスにより持病が悪化したり、いろいろなことを我慢することで体調を崩したり病気になるというケースが多く発生しており、それが引き金となり、最悪、命を落としてしまうということが繰り返し起きています。
よって、いかに早く、快適な避難生活を送る環境を整えることができるかが最重要課題といえます。
快適な避難生活を送るための環境
災害関連死を防ぐために重要なのは「TKB48」です。
「TKB」とは「トイレ・キッチン・ベッド」の略です。
つまり、トイレを清潔にし、栄養のある温かい食事を提供し、快適なベッドを整えること。
これらを48時間以内に避難所に提供し、生活環境を整えることが災害関連死を防ぐために最も重要なことです。
今回の防災キャンプではトイレ・キッチン・ベッド、3つの環境を整えるための訓練を行いました。
⑴ トイレ
災害後、避難所でまず最初に大きな問題となるのが「トイレ」です。
断水や下水管の破裂によりトイレが使えなくなり、広い範囲で深刻な「トイレ不足」となります。
その結果、避難所のトイレは糞尿の山となり、感染症の蔓延や体調の悪化につながり、最悪の場合、命を落とすこともあります。
個人的には「TKB」の中で最も重要なのが、トイレだと考えています。
このトイレ不足を解決させるアイテムが「段ボール」と「携帯トイレ※1」で作る「簡易トイレ※2」です。
※1携帯トイレ
袋の中に排泄し、吸収シートや凝固剤で大小便を吸収・凝固させるもの。
※2簡易トイレ
段ボールなどの素材でできた、持ち運びが可能な便座のある小型トイレ。
避難所にトイレはありますが、倒壊していたり断水していれば使用することはできませんし、仮設トイレもすぐに設置はされません。
そんなとき、段ボールと携帯トイレがあれば簡易トイレを作ることができ、仮設トイレが設置されるまでの間、清潔なトイレ環境を整えることができます。
また、仮設トイレが設置された後も、トイレ不足になる可能性があることから、簡易トイレは非常に有効です。
なお、携帯トイレは、1人あたり35回分(1人あたり1日5回使用×最低7日分)の備蓄が必要だと言われています。
⑵ キッチン
災害時には水が不足し、ガスや電気が止まります。
その中でも、水を節約し、温かく栄養のある食事をつくる方法として、今回の防災キャンプで作ったのが、「アイラップ※3」で作る「サバトマトカレー」です。
※3アイラップ
耐熱性のあるポリ袋。
アイラップに材料を入れ沸騰したお湯に入れるだけで、炊きたてのご飯や温かいおかずを作ることができる。
また、アイラップからそのまま食べることができるので、洗い物や片付けの手間を省くこともでき、災害時に非常に有効なアイテム。
この料理は、カセットコンロで鍋に入った水を沸騰させた後、アイラップに入れたお米とカレーをそれぞれ鍋に入れるだけの簡単料理です。
今回はカレーを作りましたが、アイラップに入れる材料によっては、肉じゃが、ナポリタン、オムレツなど、たくさんのレパートリーがあります。
また、加熱に使った水は汚れないため再利用できるというメリットがあり、水不足の災害時でも非常に有効です。
このアイラップ、カセットコンロ、鍋を使った調理法は、ガスや電気が止まった災害時でも簡単に作ることができるので、必ず準備してほしいアイテムです。
また、カセットボンベが5本あれば、4人家族で1日3食を1週間使えますので、備蓄しておくと安心です。
⑶ ベッド
災害発生後、避難所の体育館に多くの人が身を寄せ、床に「雑魚寝」をする。
仕切りなどはなくプライバシーが確保されていない。
みなさんは、このような状況をテレビなどで見たことがあると思います。
この状況には大きな問題が3つあります。
- ①冷気による体調の悪化
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床からの冷気を受けやすく、体が冷え体調を悪化させる危険がある(特に冬期時期)。
- ②感染症のリスク
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床からのほこり及び人のくしゃみや咳による飛沫を吸い込みやすく、感染症が起きる危険がある(床には長時間ウイルスが残っており、床に溜ったほこりに付着し、人が歩くたびに、ほこりごと大きく舞い上がる)。
- ③精神的ストレス
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プライベート空間がないことによる精神的ストレスで体調を悪化させる危険がある(特に授乳、着替え、睡眠時など)。
この問題を解決させるアイテムが「段ボール」を使った「間仕切り」と「段ボールベッド」です。
段ボールの間仕切りを設置するだけで、プライバシー保護の効果だけでなく、隣の人からくる飛沫を防ぐことにもつながります。
また、段ボールベッドを作り、床から30cm以上の高さを確保することができれば、床からの冷気、ほこり、飛沫を減らすことができます。
さいごに
今、日本で最も危惧されている災害、南海トラフ巨大地震・・・
南海トラフ巨大地震は最悪の場合、約32万人の死者が発生し、揺れや火災、津波などで約238万棟の建物が全壊及び焼失すると想定されています。
これは、東日本大震災の10倍を超える想定であり、国民の半分が被災すると言われています。
そんな国家存亡の危機に至るであろう南海トラフ巨大地震が発生する確率は、30年以内が70~80%、40年以内であれば90%になると言われています。
つまり、今の子供達が生きている間には、ほぼ確実に起きるということです。
よって、私達大人は、子供達の未来のために、南海トラフ巨大地震に可能な限り備える責任があります。
自分のためだけではなく、子供達の未来のために、そして、日本の未来のために、共に備えましょう!
災害発生を止めることはできなくても、私たちの行動次第で被害を抑えること、そして子供達の未来を守ることは可能です!
地震について、学びたい、備えたいという方は、ぜひ私達、山口消防防災探究会にご連絡ください!
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