先日、岩国西中学校で南河内地区と北河内地区の方を対象にした、地震防災講習会を行いました。

この講習会では、地震防災の全体像がつかめるよう、
- 災害前の防災対策
- 災害直後の避難対応
- 災害後の避難生活
の3つの段階が学べる内容を行いました。
約70名の方が参加していただき、多くの方からお礼の言葉をいただきました。
終了後のアンケートにおいても
- 災害時でも簡単にお米が炊ける方法を知れてよかった
- 知識として知っていることはあったけど実践する機会がなかったのでとてもよかった
などの感想をいただき、多くの方に満足していただける内容となりました。
また、本講習会では、NHK山口放送局の方が取材にこられ、山口消防防災探究会の取り組みを紹介していただけることになりました(放送については3月中旬ごろとのことです)。
本講習会の放送で、より多くの方に、防災について伝えることができると感じており、今回放送に携わっていただいたNHKの方々には大変感謝しております。ありがとうございます。
さて、今回紹介するのは、「災害後の避難生活」についてです。
この中で、大事な考え方を、みなさんに紹介しようと思います。
災害関連死について
災害によって亡くなる人は、「直接死」と「災害関連死」の2つに分かれます。
直接死とは、地震や津波などの直接的な原因で亡くなることをいいます。
例えば、家屋倒壊による圧死や、津波による溺死などがこれに当たります。
災害関連死とは、災害後の避難生活などの間接的な原因で亡くなることをいいます。
例えば、避難生活で持病が悪化したことによる病死や、災害後の精神的な苦痛による自殺などがこれに当たります。
能登半島地震では526人もの方が亡くなっており、そのうち災害関連死は298人です(2025年2月時点)。
熊本地震では273人の方が亡くなっており、そのうち災害関連死は218人(2024年3月時点)です。
これらのことから、災害関連死は大きな災害になるほど増える傾向があり、直接死を上回ることもあるということが分かります。
では、災害関連死の原因は何でしょうか?
直接死を上回る災害関連死がなぜ起きるのでしょうか?
それは、「避難生活を送るうえでの身体的・精神的なストレス」が主な原因だといわれています。
つまり、災害関連死を少なくするためには、いかに早く、快適な避難生活を送ることができる環境を作れるかが重要だといえます。
以下、具体的な方法について説明していきます。
快適な避難生活をおくるために必要なこと「TKB48」
「TKB」とは「トイレ・キッチン・ベッド」の略です。
- T
-
トイレ。清潔なトイレ環境にすることをいいます。
- K
-
キッチン。栄養のある温かい食事と十分な飲料水を確保することをいいます。
- B
-
ベッド。快適な寝床を整えることをいいます。
これらを48時間以内に避難所に提供し、生活環境を整え、それを維持することが災害関連死を防ぐことに繋がります。
この「TKB48」を共通認識として一人一人が実践すること、それが、避難生活を送るうえで最初で最大のミッションとなります。
災害時におけるライフライン復旧までの平均日数
TKB48を実践するうえで、知っておかなければならないことがあります。
それは、ライフライン復旧までの平均日数です。
災害関連死を防ぐためには、電気、水道、ガスなどのライフラインが止まった状態で、TKB48を実践し、維持することが必要となります。
だから、事前の準備、つまり防災対策が必要不可欠です。
電気
7日
水道
30日
ガス
14日
- 災害が大規模になれば復旧までは時間がかかる。
- 水道については上下水道。
- ガスについてはLPG。
TKB48の実践
以下、TKB48の実践について、おおまかに紹介します。
①トイレ

災害時は断水・停電でトイレの水が流せなくなります。
さらに、仮設トイレもすぐには届きません。そのような状況で、トイレを使用すると、一気に避難所のトイレが汚物であふれ、不衛生な状況になり、健康状態の悪化や感染症などが原因で、災害関連死に繋がります。
だから「携帯トイレ」を必ず備えましょう。
これを使うことで、トイレが常に清潔な状態で保つことができます。ぜひ備えましょう。
携帯トイレは、1人1日5回×日数分が必要といわれています。最低15回分(3日分)は備えましょう。
②キッチン




災害時には水が不足、電気やガスが止まります。
その中でも、温かく栄養のある食事をつくる方法が、耐熱性ポリ袋を使用した防災食作りです。
必要なものは、カセットコンロ、カセットボンベ、鍋、アルミホイル、耐熱性ポリ袋、食材(米や缶詰など)。
これさえあれば、災害時でも温かい栄養のあるものを簡単に作ることができます。
カセットボンベが6本あれば、4人家族で1日3食した場合、1週間はもちます。
また、水は繰り返し使えるため水不足の中でも使えます。
米や缶詰めはローリングストックによる備蓄がお勧めです。
どれも、簡単に準備できるものなので、ぜひ備えましょう。
③ベッド

日本の避難所の様子としてよく見られる雑魚寝ですが、雑魚寝には様々なリスクがあります。
例えば・・・
- 床からの冷気が伝わりやすく体温が奪われやすい
- フロアが固く快適に寝られない
- 床からのほこりを吸い込みやすく感染症が起きる危険がある
などです。
そこでお勧めするのが、「エアーマット」と「防災アルミシート」です。
エアーマットがあれば、床との間に距離ができるので地面からの冷気が伝わりにくく、体温を奪われにくくなります。
また、エアーマットは敷布団を敷いているような快適な寝心地で、空気を入れる量によりマットの硬さも調整できます。
エアーマットのうえから防災アルミシートや毛布をかければ普段の布団やベッドに近い状態で寝ることができます。
エアーマットは、空気を抜けばコンパクトになりますし、避難所には毛布なども備蓄されていますが、全員に行きわたらない可能性もあるので、ぜひ「サバイバルシート」と「防災アルミシート」を備えることをお勧めします。
さいごに


災害関連死の主な原因は「避難生活を送るうえでの身体的・精神的なストレス」です。
つまり災害関連死とは、「救えたはずの命」だといえます。
日本の避難所運営は阪神淡路大震災のときとほぼ変わっていないのが現実です。
そして私は、避難所運営が変わらない原因の一つとして、「自助の不足」が挙げられると思っています。
自助が不足すれば、当然、共助も公助もパンクします。
だから私達がまずやるべきことは、自分の命は自分で守れるよう備えることです。
具体的には、自分達でTKB48が実践できるよう準備し、訓練することです。
それが、共助と公助の充実に繋がり、災害関連死が少なくなるという結果に必ず繋がります。
私達一人一人が、できる準備をできる範囲でやっていきましょう!
山口消防防災探究会では、自分の命は自分で守るということをベースに、防災講習会を行っています。
興味のある方はホームページから気軽に相談してください。



