はじめに

令和7年10月18日(金)・19日(土)の2日間、岩国西中学校を会場に「岩国西中学校区 地震防災キャンプ」が開催されました。
この防災キャンプは、山口消防防災探究会といわにしネット(地域と学校の連携ネットワーク)が主催し、学校・地域・行政・企業・その他協力機関が一体となって実施したもので、子どもから大人までが「命を守る力」を学ぶ2日間となりました。
参加者は1日目が68名、2日目は75名と、とても多くの方にご参加いただき、地域の皆様の防災意識の高さを実感することができました。
また、協賛企業として株式会社キロク様にご協力をいただき、防災食や防災グッズの提供、防災グッズ販売コーナーの設置、ドローン体験や重機VR体験など、多方面でご支援をいただきました。ありがとうございました。
テーマ① “他人ごと”ではなく“自分ごと”として備える
南海トラフ巨大地震の脅威を学ぶ


初日の導入講座では、「南海トラフ巨大地震」について学びました。
この地震は約100年周期で発生しており、今後30年以内に60~90%の確率で発生するとされています。
想定される被害は全国で死者約30万人、被災者約6,800万人。
山口県では約500人、岩国市では約300人の死者が想定されており、岩国市が県内で最も被害が大きい地域とされています。
岩国西中学校区の想定リスクと備え


特に、岩国西中学校区(北河内地区・南河内地区)では、古い木造住宅が多く、地形的に土砂災害や液状化のリスクが高い地域です。
南海トラフ巨大地震が発生した場合、家屋倒壊や道路寸断などにより孤立する恐れがあります。
「救助を待つ地域」ではなく「自分たちで守る地域」を目指し、参加者は真剣な表情で講義を聞き、「個人ワーク」という形式で家族や地域での備えを考えました。
“自分が必ず被災する世代”として、強い危機意識と行動の必要性を実感する時間となりました。
テーマ② 避難所運営TKB ― 災害関連死を防ぐ「トイレ・キッチン・ベッド」
災害では「直接死」だけでなく、避難生活の悪化による「災害関連死」が大きな課題です。
南海トラフ巨大地震では、この災害関連死が5万人発生するといわれています。
これを防ぐためには、避難所における「T:トイレ」「K:キッチン」「B:ベッド」を早期に整えることが不可欠です。
Tブース(トイレ)訓練

災害時に最初に困るのがトイレの確保です。
Tブースでは、携帯トイレ、段ボールトイレ、ラップポン(岩国市危機管理課様提供)、トイレカー(株式会社キロク様提供)の3種類を使用し、設置・運用・衛生管理まで実践しました。
「トイレは“我慢するもの”ではなく“整えるもの”」という意識を共有し、参加者からは「安心感が全然違う」との声が上がりました。
Kブース(キッチン)訓練

Kブースでは、川の水を取水・浄水して飲料水を確保する訓練、給水車体験(岩国市環境政策課様提供)、炊き出しスペース設営を行いました。
水は飲料用と手洗い用に分け、節水を意識しながら70人分の豚汁と白ご飯を調理。
災害現場さながらの環境で「水の大切さ」「衛生管理の重要性」を学びました。
Bブース(ベッド)訓練


Bブースでは、エアーマット、段ボールベッド、パーテーション、ワンタッチテントなど(岩国市危機管理課様提供)を使い、寝床と居住空間を整備しました。
実際に避難所で一夜を過ごし、「避難生活の厳しさ」や「準備の大切さ」を身をもって体験しました。
火起こし訓練

マッチやライターを使ったことのない子どもたちが、火を起こす難しさを学びました。
「火は使う人によって“道具”にも“凶器”にもなる」という講師の言葉を通じ、火を扱う責任と命のつながりを実感しました。
防災きもだめし

夜には「防災きもだめし」を実施。会場内にTKBの要素を取り入れ、楽しみながらも防災意識を自然に高める内容としました。
参加者は笑顔と驚きの中で防災を学び、大いに盛り上がりました。
テーマ③ 共助 ― 自分たちの地域は自分たちで守る
災害直後は行政支援が届くまで時間がかかるため、地域の「共助」が命を守る鍵となります。
1日目の訓練を通じて、参加者は「共助なくして避難所運営は成り立たない」ことを学びました。
災害体験ブース(協力機関)



- 消火体験ブース(北河内消防団・南河内消防団)
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消火器体験、通電火災防止法、住宅用消火器紹介、消防車展示
- 応急処置体験ブース(PSRU)
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身近な物品での応急処置、クラッシュ症候群・エコノミークラス症候群紹介
- 耐震化・家具固定体験ブース(岩国市建築指導課・建築住宅課)
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紙ブルルを使った耐震実験、家具固定の重要性解説
- 挟まれ救助体験ブース(京築広域消防本部)
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倒壊建物内での挟まれ救助を地域住民で行う体験
フリー体験ブース(協力機関)




- 防災グッズ販売・ドローン体験&重機VR体験(株式会社キロク)
- 災害VR・AR体験(山口県防災危機管理課)
- ハイブリッド車による電気供給体験(山口トヨペット麻里布店)
- LPガス安全点検・復旧体験(山口LPガス協会岩国支部)
- 災害伝言ダイヤル体験(公益財団法人日本公衆電話会 山口支部)
共助の力と地域のつながり
参加者からは、「自分たちの地域は自分たちで守る意識が芽生えた」「多くの人とのつながりができた」という声が寄せられました。
この“つながり”こそが共助の力を強め、災害に強い地域づくりの基盤になります。
参加者からの声
保護者・地域
- 危機意識はあっても行動に移せていなかったので、今回、防災グッズの購入など具体的に行動するきっかけになりました。
- 全てにおいてレベルの高いイベントでした。熱意が伝わり、もっと地域全体に広がってほしいです。
- 避難所で実際にベッドを設置して寝てみて、リアルな体験ができて良かったです。
- エアーマットで寝てみて暖かさを実感しましたが、動くと音がして気を使いました。実際に体験できたことは貴重でした。
- 南海トラフ地震への危機意識が高まりました。これまで漠然としていた準備内容(TKB)が明確になり、何を整えるべきか分かりました。
- 防災訓練というと重い印象でしたが、このイベントは全てを「楽しく学べる場」にしてくれました。
- 定期的にこのようなイベントを開催してほしいです。
- 子どもから大人まで全ての世代に広がってほしいイベントでした。
小学生
- 災害時の大変さがよく分かりました。でも、とても楽しく学べました。
- 南海トラフ地震がどれほど恐ろしいかを知り、防災グッズを準備しようと思いました。
- テントを組み立てるのは難しかったけど、普段できない体験ができて勉強になりました。
- 災害の経験がない自分たちでも、防災キャンプで実際にやってみることで理解が深まりました。
- TKBを知っておけば、避難所生活でどんな準備が必要かが分かり、役立つと思いました。
- 骨折やけがのとき、身近なもので応急処置ができることを学びました。
- 東日本大震災を超える災害が起こると聞いて驚きました。怖いけれど、絶対に命を守りたいので本気で備えようと思いました。
中学生
- 災害が起きた時にどう行動すればいいのかが分かりました。体験しながら学べることで、備える意識が高まりました。
- 他の学校でもこのようなイベントを行い、楽しく学べる機会を作ってほしいです。
- 水や食料をみんなで分け合いながら炊き出しを行い、協力する大切さを実感しました。
- VR体験や救助訓練を通して、地震の怖さと自分たちができることを実感しました。
- 最初は「自分には関係ない」と思っていたけれど、今回の体験で「自分ごと」として考えられるようになりました。
- 災害時でも身の回りの物を工夫して使えることを学びました。知らなかった知識をたくさん得られました。
- TKBを初めて知り、どんな準備が必要なのかを理解できました。体験を通して自信につながりました。
- 地域の人と一緒に学ぶことで、防災は一人ではなく「みんなで守ること」だと感じました。
- 南海トラフ地震はいつ起きてもおかしくないという危機感を持ちました。これからは日常的に備えようと思います。
おわりに

南海トラフ巨大地震は、今の子どもたちが生きている間に必ず起きるといわれています。
今回の防災キャンプは、「命を守る知識」を学ぶだけでなく、「人を思いやる心」「地域を支える力」を育む貴重な機会となりました。
私たち大人には、次世代に防災を伝える責任があります。
子どもたちは“必ず被災を経験する世代”であり、私たちが知識と行動を伝えることが、未来を守る力になります。
山口消防防災探究会は、学校・地域・行政・企業と連携し、「自ら考え、行動し、助け合う地域社会」の実現を目指して、「災害に強い地域」をつくっていきます。
最後に、今回の防災キャンプに携わっていただいたすべての方に心より感謝申し上げます。
皆様のご協力により、この防災キャンプは大成功を収めることができました。
本当にありがとうございました。

